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Medical food メディカルフーズ
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腸内フローラと
オリゴ糖

3.腸内フローラの種類と特徴

世代別に変化する腸内フローラ

成人の腸内常在菌叢は、Bacteroidetes、Firmicutes、Actinobacteriaの3つの門(Phylum)が最優勢を占め、Proteobacteria、Verrucomicrobiaなどに属する菌が腸内常在菌叢の構成菌種であること、1人当り数百の菌種から構成されること、その菌種構成は個人ごとに異なり、かつ安定していることが明らかとなりました※6。一方、高齢者は成人に比べてビフィズス菌が減少すること、大腸菌群、腸球菌、一部のClostridiumが増加することが報告※7されています。16SrDNAメタゲノムを用いた高齢者の菌叢解析結果は少数ですが、 興味深い成績が得られておりBiagiらは高齢者(平均73歳)と成人(平均31歳)の菌叢を比較し、Proteobacteriaが一部の高齢者で多いことを示しました。また、高齢者と成人で多様性に大きな違いはみられないこと、ただし長寿者(平均年齢100歳)では高齢者や成人と比較して多様性が有意に減少していることを報告※8しています。

それぞれの菌の特徴と身体に及ぼす影響

このように年齢・世代別に変化する腸内フローラですが、それぞれの菌の特徴と身体に及ぼす影響などを見てゆくと

ビフィズス菌は、グラム陽性の偏性嫌気性桿菌の一種で、放線菌綱Bifidobacteriales目Bifidobacterium属に属する細菌の総称です。また、本菌属の基準種でもあるビフィドバクテリウム・ビフィドゥム Bifidobacterium bifidumのみを指すこともあり、ビフィズス菌は乳酸菌のなかの一種類です。特に母乳栄養の糞便に多く存在し、 正常な母乳栄養児の腸内フローラはビフィズス菌が極めて優勢です。腸内のビフィズス菌を旺盛にするために、母乳に含まれる乳糖やオリゴ糖などが有効であるという報告※9があります。

ビフィズス菌は、乳糖やオリゴ糖などを分解して乳酸や酢酸を産生して腸内のpHを顕著に低下させ、 善玉菌として腸内の環境を整えるほか、花粉症などアレルギー症状の緩和にも貢献していることが分かってきています。乳幼児に多いロタウイルスによる感染性腸炎の抑制をする可能性が報告されていて我々には極めて大切な腸内細菌の一つです。

一方、成年後期より老年期にかけて増加するウェルシュ菌ですが、クロストリジウム属に属する嫌気性桿菌で河川、下水、海、土壌中など自然界に広く分布しています。ヒトを含む動物の腸内フローラにおける主要な構成菌であることが多く少なくとも12種類の毒素を作り、α、 β、 ε、 ιの4種の主要毒素の産生性によりA、 B、 C、 D、 E型の5つの型に分類されています。

ウェルシュ菌は、その発症機序、病型により、ガス壊疽、出血性腸炎、エンテロトキセミア、食中毒の4種に区別されていて、腸内細菌では 「悪玉菌」と呼ばれて好ましくない腸内フローラです。高たんぱく質•高脂肪食の過剰摂取によりウェルシュ菌などの有害菌が増加しビフィズス菌が減少したり、ストレスや過労によりバクテロイデスの異常増加や、ウェルシュ菌の増加とともに乳酸桿菌、ビフィズス菌の減少がみられたりします。また、 抗菌薬の内服により耐性菌が増殖したり、食中毒などの細菌感染により腸内フローラが崩れることもよく知られています。

  • ※6 参考文献 Eckburg, P.B.et.al. Diversity of the human intestinal microbial flora. Science, 308:1635-1638,2005.
  • ※7 参考文献 Ding T; Schloss PD. Dynamics and associations of microbial community types across the human body.Nature, Vol. 509( 7500), 357-360,2014
  • ※8 参考文献 Biagi E; Nylund L. et.al. Through ageing, and beyond: gut microbiota and inflammatory status in seniors and centenarians. Plos One. 17; Vol. 5 ,2010.
  • ※9 参考文献 相川清「ビフィズス菌の応用研究」『腸内細菌学雑誌』Vol. 12( 1999) No. 2