2012年10月インタビューカリウムやたんぱく質ゼロのオリゴワンで
術後の栄養補給と排便コントロールを栄養相談
坂本八千代 氏
岡山大学病院 臨床栄養部副部長 栄養管理室室長
岡山県栄養士会 病院栄養士協議会 会長

術後の患者にとって栄養あるおいしい食生活をいかに継続できるかが課題です。制約だらけの難行苦行の食生活であればおいしいと感じることはなく長続きしません。データを示して納得してもらい、少しでもおいしく食べられるメニューの相談に乗ることが管理栄養士の役割と話す、坂本八千代臨床栄養部副部長に、オリゴワンの活用について伺いました。

●プロフィール

管理栄養士として1998年から岡山大学病院に勤務。どう実行していただけるかをデータを示して納得してもらうことが管理栄養士の仕事であり、「こうしなさい」という指導ではなく、「こうするとよくなる」と栄養相談に乗ることが役割と考えている。

趣味:筋トレにもなる社交ダンス。

モットー:後悔するくらいならやれるときに実行する。

腸内乳酸菌の育成を促進するオリゴワンとの出会いはいつ頃でしょうか?

私が岡山大学病院に赴任したのは1998年で、2年経った頃にオリゴワン(ヨーグルトサワー)を使い始めましたから、オリゴワンとの出会いは10年前に遡ります。その頃、術後の飲物として、カリウムや炭水化物を含んでいる牛乳やジュースに変わるものがないかと捜していたところ、乳果オリゴ糖のオリゴワンに出会ったのです。

オリゴワンはカリウムやたんぱく質を含んでおらず、術後の患者さんにとって理想的な飲み物でした。当時も今も、カリウムやたんぱく質を含んでいない飲物はオリゴワン以外になく、それに代わる飲物はありません。パッケージも使いやすく、まず便秘予防の飲物として使い始めました。オリゴワンは患者さんが便秘や下痢にならないような排便コントロールにとてもよく、価格も手ごろでしたので使い始めたのです。

オリゴワンを飲まれている患者さんの反応はいかがでしょうか?

オリゴワンを初めて飲む患者さんに説明する際、「カルピス風味の飲物」と言えばすぐに納得され、ほとんどの患者さんにすんなり受け入れていただけます。どんなに良いものでも受け入れていただかなければ意味がありません。

また、オリゴワンは飲みやすく、そのまま飲むだけで排便コントロールができますので、退院しても飲みたいという患者さんも多くおられます。また、看護師さんが使っているのを見て要望があり、病院の売店にも置くようにしました。その後、自分のお腹の力を支えてくれるオリゴ糖が注目されるようになり、選んでよかったと思っています。

オリゴワンにもいろいろな種類はありますが、私たちが使っているのはスタンダードなヨーグルト風味のものです。アイテムを増やすと管理しづらいので、利用する側からはスタンダードで十分と考えています。去年から早期体験学習で1グループ10人前後の学生10グループを栄養管理室でも受け入れており、オリゴワンを飲んでもらっています。ほとんどの学生が飲んだことはありませんが、カルピス風味と説明すれば全員違和感なく受け入れてくれます。オリゴワンは勧めやすく説明しやすいので、学生さんに「将来、困ったら使うように」という種まきをしています。

 制約ある食生活の中でオリゴワンに対する評価は?

食道がんや咽頭がん術後の患者さんの摂食障害をサポートするために、胃瘻(PEG)による食事を行っています。おかゆやおかずをミキサーにかけて、胃瘻で摂食していただくと、必要な栄養だけでなく食物繊維も摂ることができます。この方法であれば退院しても、家族が食べるものに近い食事をすることができます。

例えば、コロッケやうどんもミキサーにかければ食べることができ、お湯と弁当をミキサーにかけて食べることもできます。家族の食べているものの形が変わっただけですから、家族もずいぶん気が楽になります。一人暮らしの患者さんであっても、通常の食事をミキサーにかけるだけですので手軽です。

胃瘻は、食道がんや咽頭がんの術後の患者さんにとって治療の一過程です。胃瘻でないと栄養不足でダウンしてしまうこともありますが、通常食をミキサーした胃瘻であれば栄養補給も十分できます。気をつける点はエビの頭をとるくらいで、トンカツや天ぷらなどほとんどの食べ物が大丈夫です。

ただ、全部を一度にミキサーにかけるとエサになってしまいます。看護師や家族は楽ですが、患者さんはエサを食べる気にはなりません。おかゆとおかずを分けてミキサーにかけるなど、食べ物として手間をかけることで患者さんも食事としておいしく食べることができます。

ここでもお腹の調子を整えるオリゴワンは、栄養補給や排便コントロールとして効果的です。オリゴワンを飲むことで、きちんと食べてきちんと出すことができるようになります。退院してもオリゴワンをメニューとして組み込み、1日1回飲めばいい便がでますから家族も安心です。もちろん健常者が飲んでも問題ありません。

オリゴワンは腸内細菌を育ててくれるオリゴ糖が入っている大変効果的な飲物です。カリウムや脂肪、タンパク質も含んでおらず、排便コントロールだけでなくエネルギー補給として術後の食事の中に安心して組み込めるアイテムであり、岡山大学病院での2009年の総使用量は23,282本になります。


岡山大学病院におけるオリゴワンの使用状況

オリゴワン(ヨーグルトサワー)やオリゴ糖シロップをどのように活用しておられますか?

機能的にオリゴワンに代わるものはなく、定番の飲物としてのオリゴワンと、食品に添加するオリゴ糖シロップを併用しています。オリゴ糖シロップはお腹の中の乳酸菌の育成を助けるために、酢の物に混ぜて使ったり、蜂蜜と同じように使っています。また、大人の腸内の乳酸菌は老化して入れ替わるので、オリゴワンやオリゴ糖シロップで足すことができます。退院した患者さんの中にも、オリゴ糖シロップを購入して使っている方もおられます。

また、便秘対策として薬に頼らないようオリゴワンやオリゴ糖シロップを使っています。私は薬を簡単に処方されることが嫌なのです。便秘で下剤を処方したり浣腸しても便が出ないのは、便が直腸まで下りてこないからです。

きちんと食べないと便が直腸まで下りてこないため出ません。つまり、きちんと食べて水分を補給し腸の機能を高めないと、薬を処方しても便秘は治らないということです。腸のバランスを第一に考えて、食べ物で便秘を解消することができるのです。薬に安易に頼らないよう、できる範囲で取り組んでいます。

例えば、電子カルテにそうした意見を書き込んでおくと、先生が見てオリゴワンやオリゴ糖シロップを使っていただけます。オリゴワンやオリゴ糖シロップの評価は管理栄養士の中で高いのですが、残念ながら定量的な研究がありません。定年までに定量的な効果を確かめたいと考えています。

栄養士はオリゴワンを使いたいのに、看護師やドクターとのやりとりで難しいという声も聞きますが、岡山大学病院では手術の段階から栄養相談を始めているとか?

幸いチーム医療が進んでいる岡山大学病院では、オリゴワンの使用にブレーキがかかることはありません。目的を明確にして方針を伝えると使ってくれます。手術の段階で呼ばれることが一番多く、最近はICUから呼ばれることも多くなりました。最初から管理栄養士が関わっていれば、術後の食生活管理もやりやすいからです。

この背景には、2002年から栄養サポートチーム(NST)に取り組んでいるという土台がありました。実際に手術の段階から管理栄養士が関わってみるとスムースにいきます。麻酔科の先生方も、困ったら早くからNSTを呼ぼうという意識になっています。管理栄養士が早い段階で参加することでいい効果が出ています。

例えば、管理栄養士がアドバイスして、経腸栄養剤の種類を変えたり、注入速度を変えることで効果が出ます。そうした結果を積み重ねていくことによって、岡山大学病院では、NSTや管理栄養士が早い段階で参加することが定着していきました。患者さんも薬の話よりも食べ物の話の方がいい。痛くないし食事の方が楽しいからです。

とは言え、長期入院になると食事のクレームが増える傾向にあります。そこで、バランスの取れたおいしい食事をしっかり摂ってもらい、短時間で退院していただくことが一番いい訳です。そこで、私たちはこだわりをもってメニューを考えています。例えば、減塩食では出汁にこだわっています。ただ塩分減らせばいいわけではありません。また、おかゆだけは岡山で採れる粘りのある『ヒノヒカリ』というお米を使っています。このお米でつくったおかゆは大変おいしいのです。

早期体験学習の学生さんに、患者さんが食べている『ヒノヒカリ』でつくった重湯、三分がゆ、七分がゆ、そして通常のお米のご飯を味わっていただいたところ大変好評で、ご飯に三分がゆをかけて食べる人がいたほどでした。そうしたことをわかった人が育ってくると、栄養相談の内容も変わってきます。

患者さんに栄養の大事さをわかってもらい、退院しても続けてやれるようにしたいと考えています。患者さんは自分の病気のスペシャリストですから、栄養指導ではなくて栄養相談することを心がけています。

指導ではなく、相談することで患者さんも話す気持ちになります。気軽に栄養相談室に寄っていただくことで、食べ物だけでなく人生相談にもなります。私たちは患者さんのモチベーションを上げることが大切な役割であり、押しつけでなく、どうやったらいいか一緒に考えることで、正しい食生活を継続することができると考えています。

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