2016年6月インタビュー粉飴でエネルギーを補給し、長続きする食事コントロールをサポート 市川和子先生 川崎医療福祉大学 
医療技術学部 臨床栄養学科 特任准教授

腎臓病や糖尿病を中心に、リウマチ・褥瘡(じょくそう)・血液疾患などの栄養管理や、病院直営厨房の給食管理など、40年余りにわたり川崎医科大学附属病院の管理栄養士として活躍されてこられた市川和子先生(元栄養部長)。現在は患者さんの栄養指導を継続しながら、川崎医療福祉大学で今までの現場でのスキルを生かし、学生への指導はもちろん、臨床現場で活躍中の栄養士のみならず職域を越えて看護師や薬剤師などメディカルスタッフ向けの研修・講演など、幅広い場面でご活動されています。

市川先生には、病院勤務当初から粉飴をお使いいただいていますが、「粉飴」のどのような特徴を評価していただいたのでしょうか。

粉飴は、砂糖のように小さく分解されていない高分子の食材です。ですから口に入れた瞬間ほのかに甘味を感じるだけで、ほとんど甘味を感じません。

私が受け持つ患者さんは糖尿病性腎症の方が多く、そのような方々は腎不全期になると食事からのたんぱく質量は抑えなければなりません。その結果、脂肪あるいは炭水化物で、減量したたんぱく質分のエネルギーを摂るということになるのですが、高齢の方は油分の摂取が十分とは言えません。

さらに、長年糖尿病治療のために、甘いものを控えてきた患者さんが、急に「甘いものを食べましょう」と指導されてもなかなか受け入れがたい現状があります。その点、粉飴は、低甘味であるにもかかわらず糖分と同様のエネルギー補給ができ、かつ浸透圧が砂糖(グラニュー糖)などに比べて低いので、一度に多く摂取できるとても優れた食材です。その点が、糖尿病性腎症の患者さんでも比較的使用しやすい食品と考えます。しかし、血糖値の値に注意しながら使用することが重要です。

粉飴はエネルギーの必要な方に使っていただく食品ですが、具体的に対象者はどのような方だと思われますか。

主に栄養治療上、エネルギーが十分に必要な方が対象となります。

腎不全の方はもちろん他には、術後で食欲がなく十分な食事量が摂取できない方、高齢者で油っこい料理が摂取できない方、がん等で炎症が強く食欲がなく体力が低下している方、また腸炎や膵炎など治療上油脂類の摂取を控えないといけない方などに適しています。

実際に粉飴をどのようにご使用いただいていますか。

濃厚流動食のブレンド(調整)に使ったり、酢の物に入れたり、それからデザートにもよく使いますね。甘さが少ないので、おかゆに使っても違和感はありません。お寿司などにも適しています。

また、栄養学科の実習生にも粉飴を使った献立作成を課題として指示しています。

栄養学科の学生達は患者さんに提供するまでには、何度も試行錯誤を繰り返しながらやっとの思いで考案した献立は、1つとして同じ物がなく、バリエーションに富んでいます。その何種類かの料理を患者さんのベッドサイドまでお持ちし、実際に目で見ていただいてから、患者さん自ら好きな料理を選んでいただく。患者さんにとっては「食事を選ぶ」という行為が入院生活の中での楽しみになりますし、学生にとっても切磋琢磨する意欲に繋がります。

一人一つというルールは変わりませんが、視覚からは何種類もの料理を見ており、満足感がでてきます。バイキング料理もそうですが、目の前にたくさん料理があると嬉しくなりますよね。サラダバイキングの時には、ドレッシングソースを何種類も用意して、その中から選んでいただくこともあります。

そういう工夫をしていると、患者さんには「選べるんだ!」と思っていただけるようで、食事に対して制限食のイメージから一変して選べる楽しみを持っていただけます。そう感じる事は、とても大切なことなので、管理栄養士として非常に嬉しく思っています。

よく「どうやって使うの?」と聞かれるのですが、一般の方が使いやすくなるようなアドバイスをお願いします。

基本的に、何にでも使うことができますが、粉飴の一つの難点は、溶けにくいことです。特に脂肪分と合わせると溶けにくくなります。水よりもお湯に溶けやすいので、あらかじめ少量のお湯で溶かしておき、料理に加えるといいでしょう。

ドレッシングやお米に混ぜて炊いてもいいですし、寿司酢に粉飴を使うのはとてもいいと思います。お砂糖と半々ぐらいでお使いください。

また、粉飴を加えると小麦粉料理の腰が弱くなります。ホットケーキなど厚みが必要なお菓子には向きませんが、クレープなど薄く流れてもよいお菓子には適していますね。

栄養士として心がけている事はなんですか

病院とは「人」を相手にしています。ですからその人の人生に寄り添っていかなければなりません。

血糖値においても、血糖値自体は結果に過ぎず、血糖値の乱れは心のバイブレーション(微妙な変化)ということもできます。血糖値が乱れるのには、必ず原因があります。数値の裏に隠された要因、なぜそういうふうに変わったのかを、読み取らなければなりません。じっくり腰を据えて話を聴いて初めて見えてくることがたくさんあります。

以前、退院された後、他の病院に通院している患者さんが、数値が悪くなってしまったと私に相談に来られました。

数値悪化の原因で一番に考えられるのは食生活ですが、話を聞いてみたところ、食生活は変わっていないのです。

そこで、薬に原因があるのではないかと考え、処方薬を見せていただき、主治医と相談の結果、少しの期間、薬の服用を控えてもらいました。

そうしますと、数値が改善されたとのことで、患者さんも自分の食生活に非はなかったと、とても安心されていました。私はできるだけ患者さんを信じて、対応することを心がけています。

食事療法をしながら、病気に立ち向かわれている患者さんやそのご家族の方々に何かアドバイスはありますか?

食事制限という言葉は好きではありません。「制限」ではなく「コントロール(調整)」だと思います。患者さんの今の身体の状態を十分把握して、心にも寄り添って、身体に適合するようにコントロールした食事を作ってあげてください。

血糖値が高い人は、甘いものや炭水化物をコントロールしなければなりませんし、腎臓が悪くなっている人は、たんぱく質をコントロールする必要があります。血圧が高い人は、減塩しなければなりません。

長続きしないと意味がないので、その人に寄り添ってうまく歩めるような食事療法を支援する必要があります。あまりに厳しいとストレスがたまってしまいます。

最も重要なことは食事を楽しむことではないでしょうか。以前、私共が行いました食事会では、水分制限のある患者さんに、かき氷を提供しました。かき氷だと水分は少しですむのに、見た目の量はたくさんになります。そして、粉飴入りの氷蜜も3種類準備して選んでいただきました。患者さんはもちろんですが、スタッフも喜んでいただき、こちらもやっていてとても楽しい食事会でした。

市川先生のご活躍、今後の目標について

コンプライアンスからアドヒアランス(患者さんが積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を行うこと)と言われていますが、最近、こうした対応の難しさに栄養指導の奥の深さを感じます。

私は、栄養を身体所見からアセスメントする「ニュートリションフィジカルアセスメント」に取り組んでいます。腎臓が悪くなっている人に、尿の回数や足のむくみなどの問診を丁寧に行うと、検査データを見なくてもおおよその見当がつくようになってきます。

また、チーム医療の中で、管理栄養士に求められているスキルは何だろうかとよく考えます。私は薬の副作用を考えて、食事療法メニューを作り、薬剤師の方々に向けてプレゼンテーションしています。「管理栄養士さんがそこまでできるのか」と驚かれましたが、栄養と同時に薬のこともわからないと、私の目指す栄養管理はできません。

私は、40年以上病院の管理栄養士として勤務していましたが、まだまだ勉強して色々な知識を身に付けたいですし、その知識でより多くの患者さんのお役に立ちたいと思っています。そして、これからは在宅に向けて地域での栄養管理が求められていますのでもっと広域での栄養管理を目指していきたいと思っています。

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