臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第9号2013年6月発行

介護老人保健施設において乳糖果糖オリゴ糖に
より排便改善がみられた症例


(四日市社会保険介護老人保健施設、サンビュー四日市 木村由香管理栄養士、
四日市社会保険病院 中東真紀管理栄養士)

●施設の概要

当施設は、現在の入所者数:97名、平均年齢:85.7歳、平均介護度:3.1の介護老人保健施設であり、自分の足で歩ける人は少なく、入所者のほとんどは車いすです。

●経緯と目的

車いすが多い当施設の入所者には、下肢の運動量が少なく腸蠕動が低下することが原因の弛緩性と思われる便秘の方が多くいます。これまでは看護師らが排便状況を確認し、瀉下薬を使って排便コントロールしていました。

瀉下薬は、まず内服薬を使い、定期的に内服しても排便コントロールが改善しない場合には、状態をみながら、坐薬や浣腸を臨時で使用することが多くありました。

しかし、薬には副作用のリスクがあり、また坐薬や浣腸は1つ1つが高価です。当施設は在宅復帰を目的とする介護老健であるため、食事の工夫で在宅に近い形で排便コントロールをすることが理想です。

以上のことより、今回は瀉下薬に加え、オリゴ糖シロップを経口摂取することで、より自然な形、いわゆる「下剤に頼らない」排便コントロールを目指しました。

●対象と方法

今回、対象としたのは瀉下薬で排便コントロールを行っているにも関わらず、慢性の便秘症状や便秘と下痢のくり返しがみられる入所者 15名、調査期間は平成22年2月8日から23年1月15日の 342日間です。

オリゴ糖シロップを経口摂取してもらい、摂取前と摂取後の排便回数、便の性状及び使った瀉下薬の種類と量を対象者それぞれのカルテで確認し、比較しました。

オリゴ糖シロップは、小さじ1杯を7gと定義し、排便状況をみながら1日に小さじ1杯〜4杯をお茶に溶かして提供しました。

●症例

特に効果の高かった3つの症例を報告します。

●考察

症例①と②は、乳糖果糖オリゴ糖シロップを摂取することで排便回数や便性状の改善がみられたため、

下痢による皮膚トラブルや便秘による残便感、腹痛などの腹部症状と言った入所者の負担が減りました。また、使用する瀉下薬の量も減り、在宅復帰しやすい状態になりました。

症例③は、排便状況に大きな変化はありませんでしたが、瀉下薬の種類を変更できたことを評価しています。主として使う瀉下薬をラキソベロン液に変更できたため、腎機能が低下した人に酸化マグネシウムを長期投与した場合に起こる高マグネシウム血症のリスクや浣腸により 溜まった便を一気に排出することで起こる急な血圧変動のリスクを減らすことができました。さらに、この男性は 浣腸の回数が減るに従い、杖を振り上げて介護抵抗するほど機嫌の悪い日が減りました。坐薬や浣腸の際に 受ける不快感が減ったためだと推察されます。

これらのことから、乳糖果糖オリゴ糖シロップの経口摂取による「下剤に頼らない排便コントロール」を目指した取り組みが、入所者のQOL向上につながったのではないかと考えています。

●今後の課題と展望

瀉下薬による副作用のリスクを減らすことはできましたが、費用については、今回調査した中では 削減できていませんでした。

瀉下薬自体の費用は月平均で一人当たり10.1円減少しましたが、乳糖果糖オリゴ糖シロップ代が53.5円 かかっているため、差し引きすると入所者一人当たり月に約43.3円費用が増えています。

しかし、オリゴ糖は食品であるため、副作用の心配がなく、在宅復帰後も同じように続けやすいことが大きなメリットです。効果が確認できた人には、差し入れのふりかけと同様に家族に購入を依頼することを検討していきたいと考えています。

また、今回は排便状況の変化しか確認していませんが、「便が出ないと、ご飯がおいしく食べられない」と訴える入所者が多いことから、喫食率の変化も確認し、体重や上腕皮下脂肪厚などの身体計測値に影響が出るかも追跡調査したいと考えています。今後はこれら2点を含め、より多くの症例を重ね施設全体での効果を確認したいと考えています。

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