臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第9号2013年6月発行

乳糖果糖オリゴ糖による下痢防止効果の検証


(高砂市民病院 杉下周平言語聴覚士、姫路日赤病院脳神経外科 松井利浩医師)

●目的

経腸栄養の合併症の一つである下痢症状は、栄養管理や全身管理上の問題となります。下痢発生の要因として経腸栄養剤の成分や注入速度などが知られていますが、腸内細菌叢の崩れも重要な因子となります。そこで、統一された経腸栄養剤および注入速度下において発生した下痢症状に対して、ラクトスクロース(LS)を投与しその効果を検討してみました。

(ラクトスクロースとは)
特色:生体内のBifidobacteriumに選択的に作用し増加させる。有害菌への作用が少ない。難消化性糖質であり、小腸で分解されずに、大腸に達しやすい。
製品:㈱H+Bライフサイエンス製
オリゴ糖シロップ分包
1包(7g)にラクトスクロース3.6g含有

●対象

年齢20歳〜90歳の男女で経腸栄養中に下痢が発症したものとしました。消化管の手術歴、器質的病変、慢性疾患を有するものを除外しました。

「経腸栄養剤の種類と投与速度」
栄養剤:CZ-Hi(クリニカ)
投与速度:250ml/時

「下痢発症の定義」
便の形状、重量をKing’s Stool Chartを用いてスコア化しました。
(下痢発生)2回連続スコアがJ、K、Lの場合
(下痢症状軽快)2回連続スコアがJ、K、L以上の場合


King's Stool Chart (Abbott)

●乳糖果糖オリゴ糖の投与量

1回2回(朝、夕)、1包(7g)を、経腸栄養剤注入後、フラッシング用の白湯20ccに溶解後投与しました。投与後1週間で症状の軽快なければ、1回量を2包(14g)に増量しました。
「便採取時期」
第一検体:経腸栄養開始前(BL)
第二検体:下痢発生時(Pre)
第三検体:下痢症状軽快時(Post)

●腸内細菌検査(分子生物学的手法)

T-RFLP法(テクノスルガ)により解析し、細菌の占有率を求めました
「分析対象」
調査患者数:247名 (66.9±17.2歳)
男性:152(66.9±17.2歳)
女性:122( 66.3 ±16.6歳)

経管栄養実施者数:29名 (76.7±10.0歳)
男性:13名(74.2±11.6歳)
女性:16名(78.6±8.3歳)
下痢発生者数:5名
男性:2名( 77.5±16.2歳)
女性:3名( 83.0±6.6歳)

●結果

下痢発生分析対象詳細

便形状の変化

●考察

経管栄養中に下痢症状を呈した5名全例でLS投与後に症状が軽快しました。うち3名は善玉菌であるBifidobacteriumとLactobacillales目の占有率が増加し、また2名は 悪玉菌であるBacteroidesが減少していました。
これは、LSがBifidobacterium増加に作用したことで、短鎖脂肪酸と呼ばれる有機酸が増え、大腸のエネルギー源となって水分吸収を改善したり、小腸の絨毛を伸長させるエンテログルカゴンなどのホルモンを分泌させた効果かも知れません。今後は、その適応も含め詳細な検討が必要であります。

●結語

ラクトスクロースは下痢症状の改善に寄与する可能性があります。安価であり、各種オリゴ糖の中でも少量で効果が出やすく多く取っても下痢を起こしにくい特徴があり、積極的に使用してみる価値があるものと思われました。

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