臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第7号2012年4月発行

血液透析患者の乳果オリゴ糖使用による
血中尿素窒素値の変化


(医療法人愛徳会上村内科クリニック 柿野良太 管理栄養士)

●はじめに

腸内環境が悪化すると、腸内の有害菌が増殖し、多量のアンモニアが発生します。血液透析を継続的に行うと、カリウム・水分を制限するため食物繊維の摂取が不足し、薬剤の長期服用および運動量の低下によって、腸内環境が悪化しやすい状況になります。

当院の血液透析患者様に対し、便通改善のため乳果オリゴ糖を1日7g、おやつとして提供したところ、便通改善では有意な変化は見られませんでしたが、血中尿素窒素値に変化が見られました。

対象者として、当院附設の有料老人ホームに入居している血液透析患者様11名を選びました。しかし、血中尿素窒素値は、たんぱく質とエネルギーの摂取量に影響を受けるため、研究期間中に体調不良や食事内容の変更があった6名を除き、5名の方を最終対象者としました。

対象者5名のうち、3名が男性、2名が女性、平均年齢は86.8歳です。

●研究の概要

以下は、乳果オリゴ糖を混ぜて作ったおやつの例です。他にも、いろいろなレシピを作成しています。

使用したオリゴ糖は、H+Bライフサイエンスの「オリゴワン 乳果オリゴ糖シロップ」です。乳果オリゴ糖は、グルコース、ガラクトース、フルクトースが結合した、ラクトスクロースと呼ばれる難消化性のオリゴ糖です。

人の消化酵素では分解・利用できず、腸管内でビフィズス菌などの有用菌のえさとなり、数を増やし、腸内環境を改善します。

甘さは砂糖の50%、水あめのような食感です。使用上限摂取量は、体重1kg当たり0.6gとされています。摂取しても血糖値はほとんど上がらないため、糖尿病の方にも使用可能です。ただし、過剰摂取すると下痢を起こす場合があります。

図1、図2は、個々の対象者様の血中尿素窒素値の変化をグラフにしたものです。図3は対象者様5名の血中尿素窒素値の平均値をグラフにしたものです。

グラフ中の区切り線より、左側がオリゴ糖使用前、右側がオリゴ糖を1日7g使用したときの数値です。

乳果オリゴ糖の使用を始めて1カ月目、血中尿素窒素値の低下が見られたのは、5名中3名でしたが、5カ月目になると5名全員に数値の低下が見られました。血中尿素窒素値の平均は、オリゴ糖使用前で57.4mg/dlでしたが、使用5カ月目では46.2mg/dlに低下していました。

オリゴ糖使用前と、使用5カ月目の、平均値におけるt検定の結果、両条件において統計学的な有意差が見られました。したがって、乳果オリゴ糖の使用により、血中尿素窒素値が低下するということがいえると思います。

●まとめ

血中尿素窒素値が低下したのは、オリゴ糖代謝によってつくり出される「有機酸」によって腸内のpHが下がり、腸内で発生するアンモニアの吸収量が減少し、肝臓の「尿素サイクル」へ送られるアンモニア量が減少したためだと考えられます。

また、使用を始めて1カ月目よりも5カ月目のほうが数値が下がっていました。これは、オリゴ糖はあくまで食品であるため即効性はありませんが、時間をかけて腸内環境を改善させるためだと思われます。したがって、継続摂取が必要であると考えられます。

透析患者様の食事は、カリウム、リンの制限により、食物繊維摂取量が1日平均10g前後と少なく、リン吸着剤や緩下剤などの薬剤の長期使用によって腸内環境が常に悪化しやすいため、乳果オリゴ糖1日7gの摂取では便通改善は困難だったと思われます。しかし、使用量を増量すれば改善が見られるのではないかと考えます。

今回は便通改善に有意な変化は見られませんでしたが、対象者様からは「便が柔らかくなり、以前よりも排便がしやすくなった」「下剤ではなかなか出なかったが、オリゴ糖を使い始めて出るようになった」といった声も聞かれました。また、1年前の冬季に比べ、風邪薬(PL顆粒)を処方された方も減っていましたので、今後、免疫機能への働きについても研究ができればと考えています。

今回の調査では、対象が高齢者であったため、安定した食事摂取量を維持することが難しく、対象者数が減少してしまったことが課題となりました。

透析患者様のQOL向上のために、腸内環境の改善を積極的に進めていけれぱと考えています。そのためにも乳果オリゴ糖はとてもよい素材であるので、今後も使用を続けていきたいと思います。

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