臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第7号2012年4月発行

高齢透析患者に対する排便習慣改善の試み
~乳果オリゴ糖を利用して~


(岡山済生会総合病院 坪井里美 管理栄養士)

●はじめに 

2010年の日本透析医学会の調査によると、日本で慢性透析療法を実施している患者数は約28万人を超え、毎年1万人ずつ増え続けており、国民の500人に1人が人工透析を受けているのが現状です。

人工透析における食事療法では、カリウム制限のため野菜や芋類、果物を控えることから食物繊維の摂取不足が起こりやすく、また水分制限があること、運動不足になりやすぃことなどから、便秘の患者様が多く見られます。

便秘は食欲不振や腸内細菌叢の変化による尿毒素の産生と関連し、透析治療に大きく影響を与えると報告されています。

これまで我々は、高齢透析患者様における排便習慣に関する調査やビフィズス菌末を用いた介入試験を行ってきました。結果として

  • 新しい試みをするより現状維持を望まれる方が多いこと
  • 高齢透析患者様には便秘が多く、多くの方が下剤を使用していること
  • 下剤を服用しても便秘が続いたり、下剤による下痢などに困っていること

などが挙げられ、高齢透析患者様の便秘改善のため、安心して受け入れてもらえる改善方法を検討し、個人個人の病態や生活状況に合わせた取り組みを提案していくことが必要と思われました。

そこで、便秘が見られる高齢透析患者様に対して、排便習慣の改善を目的として、乳果オリゴ糖を用いた介入試験を開始しました。

乳果オリゴ糖は、腸内細菌の善玉菌と呼ばれるビフィズス菌を腸内に増やし、排便を良好にすることができるとされています。腸内にビフィズス菌を増やすことで透析患者様の排便習慣を良好に保つことができれば、便秘の治療、ならびに患者様のQOL向上につながるものと考えられます。

今回、行った試験の経過観察について報告いたします。

●試験の概要

試験の対象:当院にて血液透析(HD)、腹膜透析(CAPD)にて治療を行っている患者様のうち、便秘傾向にある方。

試験開始前、患者様に対して試験目的を十分に説明し、同意書を得てから実施しました。

試料としてH+Bライフサイエンスの「オリゴワン オリゴ糖シロップ」を採用。1日2包を基本として、自由摂取していただき、試用中の排便状況・生活状況の記録、試用前後のアンケート調査から、乳果オリゴ糖が排便に及ぼす影響を検討しました。

実施期間:20ll年9月1日~10月6日のうち2週間。

調査内容

  1. 乳果オリゴ糖服用前の生活、嗜好状況などに関する調査。
  2. 乳果オリゴ糖服用中の排便内容、生活、食事摂取状況に関する記録。
  3. 乳果オリゴ糖介入前後の排便状況、検査値の変化、生活状況モニタリング、服用効果についての比較検討。排便状況については、好ましいと考えられる排便状況の出現回数を1週目と2週目の間で対応のあるt検定を行いました。
  4. 乳果オリゴ糖の生理作用についてはパンフレットを作成の上、患者様に説明を行いました。

 

●結果

下図は、被験者の背景です。

下図では、排便項目について、オリゴ糖服用1週目と2週目でどのような変化をしたか、好ましいと考えられる状況の出現回数で比較しています。排便回数、排便量は、1週目と2週目であまり変化は見られませんでした。

下図は、排便の硬さ、容易さについてです。良好になった方が多く見られました。

下図では、腹部症状と排便の容易さを比較しています。服用1週目に腹部症状を訴える方が多く見られましたが、2週目以降では腹部症状がなくなった、もしくは減ったと回答した方が7名見られました。このことから、1週目は便秘による腹部膨満が見られても、2週目には症状が和らいだと考えられます。

下図は、血液検査値の変化です。大きな変化が見られないことから、オリゴ糖による病態の悪化はないものと思われます。BUNは、HDで5名、併用で2名、CAPDで2名、計9名(69%)の方に低下が見られました。

被験者様の感想です。13名中8名(62%)の方が「排便効果が得られた」と回答しています。

透析室の待合室で最初にオリゴ糖の話をしたときは、多くの被験者様は消極的でした。そこで、「オリゴ糖は薬ではなく食品」であること、「排便をよくする効果が期待できる」ことをお話ししたところ、少しだけ興味を持ってくださいました。とはいえ、半信半疑でオリゴ糖の服用を始めた方が多かったように思います。

服用を始めて排便状況がよくなるのをご自身で感じてくださり、終了時には「オリゴ糖を飲んでよかった」という回答が多く得られました。

●まとめ

考察およびまとめです。

オリゴ糖介入は、便秘改善の効果が期待でき、透析患者様のQOLの向上につながる1つの手段になり得るものと考えられます。

オリゴ糖の長所は、腸内環境を整えて排便状況をよくすることに加え、オリゴ糖服用時に規制がほとんどないことが挙げられます。好きな時間にどんな料理や飲み物にも使えることから被験者様に受け入れられやすく、その使いやすさから多くの被験者様が服用を続けられたのではないかと考えられます。

今後も透析医療チームの一員として管理栄養士の役割を果たし、透析患者様のQOLの維持向上を図りなら、病態の進行を食い止められるよう、患者様1人ひとりに対応した支援を続けていきたいと思います。

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