臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第5号2011年8月発行

オリゴ糖を用いた便秘改善の取り組み
“目指せ、快便!”続編


(医療法人和泉会 いずみ病院 宮城弘美 看護師)

●はじめに

当病棟は「認知症治療病棟」です。認知症のために理解力が乏しくなっている患者様に便秘処置を実施する際、協力を得ることは難しく、大声をあげて抵抗する場面が多々見られました。

そのようなことから、患者様が楽に排便でき、快適な日常を過ごせないものかとの思いから、昨年、便秘処置を要する患者様を対象に“オリゴ糖を用いた便秘改善”を看護研究として取り組みました。

そうしたところ、オリゴ糖を使用した後、便秘処置回数の減少や便の性状の改善、便秘処置時間の半減など、良好な結果を得ることができました。

そこで今回は、入院中の患者様全員にオリゴ糖を摂取してもらうことにし、昨年からのオリゴ糖飲用継続患者様の追跡も含め、便秘処置回数や便の性状、排便日数の変化などから当病棟のオリゴ糖飲用継続の結果をまとめたので、ここに報告します。

●研究方法

期間:2010年3月15日~6月30日。

対象:入院中の全患者様46名中、排便確認の確実な患者様30名。

  • A群:オリゴ糖継続飲用の患者様 14名。
  • B群:今回より飲用開始した患者様 16名。

飲用方法

  1. 毎日1回200ml の飲み物にオリゴ糖シロップ7gを混ぜ経口摂取してもらう。対象者様全員の飲水量をチェックし、水分摂取量の少ない患者様には食事に混ぜるなど工夫を行い、確実に飲用できるように実施しました。
  2. 期間中の排便日数と便秘処置の回数、性状を観察し、1カ月単位でまとめ飲用以前のデータと比較検討を行いました。

●結果および考察

A群

  1. オリゴ糖継続飲用のA群ではほぼ普通便になり、処置の回数は減少しています。飲用前と比較すると、非摂取時の処置回数は60回であったのに対し、飲用半年後45回、飲用1年後37回と飲用継続にて処置回数は半減しています。
  2. 90歳代のB氏は、便の状態が常に、ビー玉大から卵大の硬便であり、便秘状態が続いていました。そのため座薬を挿入し、排便を促す必要がありましたが、処置への抵抗があり、スタッフ2名での対応を要しました。しかし、オリゴ糖継続飲用にて自然排便が保たれ、ここ半年間便秘処置は実施されず、定期処方されていた下剤も中止となっています。
  3. 便秘が改善されなかった患者様は14名中4名(C、D、H、I氏)でした。
    そのうちのC氏は、便秘時には腹痛などの不快感から不機嫌や食思低下などが観察されました。そのため、便秘3日目より対応する処置を2日目より実施することとなりました。それがデータ上の処置回数が増加した結果となっています。
    またC氏においては疾患の特性のため、9種類の薬剤を20年以上内服していました。このような、多剤併用の長期服用は便秘をもたらす1つの要因といえます。

B群

  1. 今回よりオリゴ糖7g飲用開始のB群では、排便日数が増えた患者様は16名中13名と約81%を占めました。
  2. B群患者のうち、定期処方されている薬に緩下剤が含まれている8名のうち、比較的早期に効果が出現し、ほぼ毎日排便があった3名は緩下剤の処方が中止となりました。

便秘の症状は軽いものの、緩下剤使用によって便通を維持されていた他の患者様も、経過を見ながら薬剤を調整する方向で医師と共に検討しています。

●まとめ

A群は、オリゴ糖の飲用の継続期間が1年余、B群では2カ月半です。差があるため、作用効果については、正確な有意差として評価することはできません。しかし便秘処置回数の減少と、排便日数の増加、普通便への移行などの効果が見られ、自然排便についてはオリゴ糖飲用によって成果を得ることができたといえると思われます。

また、取り組みの中で、各患者様の便秘時の症状の観察だけでなく、食事・水分量・内服などの情報を共有できたことは、個別ケアを進めるうえでの大きな収穫となりました。

排便状態に変化のなかった患者様に対しては、2010年7月よりオリゴ糖摂取回数を1回から2回の14gに増量して経過を見ています。今後の結果にも期待したいと思います。

●おわりに

2009年より、オリゴ糖飲用継続による自然排便が可能となるようなケアの実践に取り組んできました。今ではオリゴ糖を摂取するための援助が日勤業務の一環となっています。患者様に便秘が続くと、スタッフ間で「オリゴ糖は使用しているの?」という声も多く聞かれるようになりました。

認知症によって理解力が低下している患者様の不穏、粗暴行為は、BPSD(認知症周辺症状)ととらえ、対応に苦慮することも多々あります。しかし、その不穏の原因が身体の不調の訴えのときもあり、便秘もその1つと考えられます。

我々は不穏として表現される症状の要因を追及し、適切な対処や工夫、働きかけによって患者様の症状を改善できることを学びました。これからも患者様1人ひとりの体から発せられるメッセージを理解する努力を続け、認知症の方の想いに沿ったケアを実践していきたいと考えています。

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