臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第5号2011年8月発行

乳果オリゴ糖摂取による便秘・下痢改善を試みて
(食品での排便コントロール)


(医療法人互生会 介護老人保健施設ぎんなん荘 九谷由美子 管理栄養士)

●はじめに 

当施設で排便サポート(下剤・浣腸・摘便)を行っている入所者様は半数を超え、精神的・身体的苦痛を訴えられる方も多く、便秘や下痢による腹痛が、食事摂取の拒否や食事摂取量の低下につながることもありました。

排便サポートとして下剤の服用が一般的になっていますが、マグネシウム下剤(酸化マグネシウムなど)による高マグネシウム血症や、大腸刺激性下剤(プルセニド、センナ、大黄、アロエ、ラキソベロンなど)による便秘の助長などの問題があり、下剤だけに依存せず、自然な排便が可能となる方法を模索していました。

改善策として本人の腸内細菌叢を整えることが必要であると考え、今回、乳果オリゴ糖を選択してみました。

ビフィズス菌製剤も検討しましたが、1日当たり100円以上の経費がかかりますし、外部から摂取したビフィズス菌は定着しにくいともいわれています。

しかし、乳果オリゴ糖の経費は1日約10円と非常に安価です。しかも、腸内のビフィズス菌の栄養源となって、入所者様自身のビフィズス菌を増やして腸内環境を整え、腸の蠕動運動を活発にすることで便秘を改善でき、ビフィズス菌増殖効果により下腹部膨満感も軽減し、水分吸収力を活発にすることで下痢改善にもつながるとのこと。こうしたメリットから、乳果オリゴ糖による入所者様の便秘・下痢症状の改善を試みることにしました。

●研究の概要

目的

  1. 自然排便への変化はあるか。
  2. 下剤使用頻度の減少は見られるか。
  3. 排便回数・便性状に変化は見られるか。

以上の3点について調査し、排便コントロールに役立てる。

方法

下痢症状1名(1カ月以上慢性的下痢の男性)、便秘症状12名(排便サポート施行中の男性4名、女性8名)の対象者様に対し、お茶100ccにオリゴ糖シロップ小さじ1杯/日を溶かしたものを、3週間使用。研究期間の1週目はオリゴ糖非摂取期間、2~4週目をオリゴ糖摂取期間としました。

倫理的配慮

対象者様および対象者様のご家族に対して、研究の主旨、匿名性の保持・研究協力が自由であることを口頭で説明し、同意をいただきました。

●結果

下痢対象者様の排便回数は、摂取1週間前の16回/週から摂取3週目では11回/週と、介入後の排便回数は有意に減少し、便性状は、下痢・泥状便から普通・軟便への変化も見られました。

対象者様は介入前、下痢症状時に整腸剤を服用していましたが、介入後、整腸剤の使用は減少し、摂取3週目には整腸剤の服用は必要なくなりました。

対象者様は本研究終了後も乳果オリゴ糖摂取を継続、下痢症状の改善も継続しています。入所前の在宅生活では、下痢症状によりご家族の負担も多かったため、ご家族の希望により、退所後も在宅で乳果オリゴ糖摂取をさらに継続しています。

便秘症状の対象者様は、摂取1週目では乳果オリゴ糖と下剤の併用により、介入前に比べ、下痢・泥状便や、便秘による硬便から、普通・軟便への便性状の変化があり、排便回数の増加も認められました。下剤の使用頻度は摂取2~3週目で12名中3名が、定期下剤の使用を中止しても、排便コントロールでき、自然排便が可能となりました。

●考察

下痢症状の対象者様については、排便回数の減少、下痢・泥状便から普通・軟便への便性状の変化など、乳果オリゴ糖摂取によって腸内ビフィズス菌の割合が増えることにより、腸内細菌叢が改善されたことによるものと考えられます。

便秘症状の対象者様について、摂取1週目の下痢・泥状便、排便回数の増加が認められたのは、下剤と乳果オリゴ糖の併用により、下剤が効き過ぎたためと考えられます。皆さん、主に、センナ茶・センノシドなどのアントラキノン系誘導体下剤を服用していました。

これらの下剤はビフィズス菌などの嫌気性腸内細菌によってレインアスロンという成分が産生され、下剤としての働きをするため、乳果オリゴ糖のビフィズス菌増殖効果により腸内菌叢が改善され、下剤が効き過ぎたことが考えられます。

そして、摂取2~3週目、下痢・泥状便から普通・軟便への便性状の変化は、腸内菌叢が改善されたことにより定期下剤を中止した方がいたためと考えられます。

さらに、摂取3週目に見られた排便回数の増加は、腸の蠕動運動を活発にする乳果オリゴ糖の効果が表れた結果であると考えています。

当施設も使用しているアントラキノン系誘導下剤(センナ・プルセニドなど)の長期服用により、腸の色素沈着を起こし、大腸メラノーシスという症状を起こす場合があります。自覚症状はありませんが、黒い色素沈着が腸管の神経叢を変性させ、大腸がまるで伸びきったゴムのようになり、大腸の働きをますます弱めてしまいます。

下剤の長期服用は、便秘の助長につながるともいわれています。スタッフ間でも、下剤重視から多職種協働による便秘対策が実施できるようになってきました。

本研究の目的である自然排便への移行、下剤使用頻度の減少、排便回数の増加、便性状の良好化などについては、研究結果から腸内細菌叢の改善により、腸の水分吸収力の正常化や蠕動運動の活発化など、乳果オリゴ糖を、下痢・便秘改善に向けて役に立てることができると考えられます。

●おわりに

本研究は実施期間が4週間と短く、研究対象の少なさによりデータが抽象的なため、一般化するには限りがありますが、乳果オリゴ糖の効果は明らかに存在し、下痢・便秘対策に有用であると考えられます。

現在も乳果オリゴ糖の摂取は継続しており、スタッフやご家族の関心も徐々に強まっています。習慣的な下剤の投与のあり方を多職種協働で見直し、入所者様自身のQOL向上につながるよう、今後も取り組んでいきたいと考えています。

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