臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第3号2011年1月発行

自然排便を試みて


医療法人同潤会 介護老人保健施設 長生園 福園千江美 管理栄養士

●はじめに

従来、当施設では、便秘のある利用者様に対しては、緩下剤を使用して対応していましたが、服薬を拒否されたり腹部不快感を訴えられる方が多く、対応策の検討を重ねてきました。

薬剤に頼らず、自然排便を促すことで精神的不穏を和らげ、かつQOL の向上へつなげようと、食事に着目しました。

まず、主食に麦ご飯を導入したところ、利用者様によって好き嫌いの問題が生じ、有意な効果も認められませんでした。

そこで、次に、腸の働きを活発にし、緩下剤的な効果があるといわれる「オリーブオイル」の活用を始めました。

初めは、ドレッシングにオリーブオイルを用いてサラダにかけたり、炒め物や揚げ物などに使う調理油をオリーブオイルに変えて使用することを考えました。しかし、この方法では必要と考える量のオリーブオイルをなかなか摂取できない上に、当施設の利用者様は、野菜嫌いの方が多いこともあり、サラダのドレッシングに使っても野菜を残されてしまっては効果が期待できない可能性もあり、確実な摂取方法として、毎朝食の牛乳にオリーブオイルを混ぜて飲用していただくことにしました。

●研究の概要

対象:経口摂取で、便秘による緩下剤使用中の利用者様10名。

摂取方法:毎朝食の牛乳にオリーブオイルを入れたものを摂取。

<1人分の分量>

  • 牛乳200ml
  • オリーブオイル30ml
  • 砂糖15g
  • バニラエッセンス適量

牛乳とオリーブオイルだけでは油臭くて飲みにくいため、砂糖、バニラエッセンスを加えて甘さと風味を出し、飲みやすくなるよう工夫しました。

つくり方

  1. まず、オリーブオイルと牛乳をミキサーにかけて攪拌し、油と牛乳をなじませる。ただ一緒に混ぜるだけでは油分と水分に分離してしまいます。
  2. 鍋に移して火にかけ、砂糖、バニラエッセンスを加える。
  3. 沸騰したら泡立て器でよく混ぜて、でき上がり。

これを一晩、冷蔵庫で冷やし、朝食時に出すと、皆さん、おいしいと毎朝飲んでくださいました。

結果

対象者様10名のうち、効果が表れたのは、6名でした。成功した6名の方の緩下剤使用数の変化をグラフで示します。

11月にオリーブオイルを使用し始めると、緩下剤数の減少が見られましたが、効果としては弱いものでした。 

●さらなる改善を目指して乳果オリゴ糖を導入

そこで、3月から砂糖を減らし、整腸効果があるといわれる「乳果オリゴ糖」を加えてみることにしました。

<1人分の分量>

  • 牛乳200ml
  • オリーブオイル30ml
  • 砂糖7g
  • 乳果オリゴ糖7g
  • バニラエッセンス適量

「乳果オリゴ糖」を加えると、劇的に効果が表れ、緩下剤数は大幅に減少していきました。排便回数の変化を見ても、6カ月後には全体的に大きく増加していることがわかります。

中でもA.Mさんの場合、1カ月間で18回だった排便回数が、摂取を始めて6カ月後には62回に増加していました。

●まとめ

今回の取り組みを通して、緩下剤の投与が中止できるまでの効果は得られませんでしたが、利用者様が腹部不快感を訴えたり服薬拒否をされる機会が非常に少なくなりました。

また、今回は食事による改善を目指しましたが、自然排便は食事に加え、日常の規則正しい生活、水分摂取、運動などの要素とともに促進されていくものであり、今回の取り組みを通して職員の間でも総合ケアへの意識が高まりつつあります。

緩下剤中止に向けての意識を明確に共有しつつ、職員1人ひとりがそれぞれの持ち場において、利用者様に対し、より適切なケアに努めていくことを、日々、再確認しているところです。

今後も、自然排便、緩下剤中止を目標に据え、利用者様お1人おひとりに合った排泄支援の取り組みを行っていきたいと考えております。

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