臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第3号2011年1月発行

排便困難患者へのオリゴ糖使用による
その有用性について


(医療法人清和会 吉南病院 大橋高弓 看護師)

●はじめに

精神障害者の長期にわたる抗精神薬の内服は、抗コリン作用などにより不可逆的症状を呈し、口渇、便秘、排尿障害の頻度は増加することが多く、また抗精神薬による抗ドーパミン作用は、身体機能の低下をもらし、排便状態をより悪化させます。

加えて、排便状態の変調に対し、対症療法的に下剤などの薬物投与を続けると、さらに排便状態を困難(麻痺性イレウス)にし、巨大結腸症を引き起こすといわれています。

当院においても、長期入院患者様の中で同様の症状が多く見られます。今回、対象とした15名の患者様は、下剤など(浣腸を含む。)を常時使用し、常に排便状況の観察が必要とされている方々です。また15名のうち、半数以上は、巨大結腸症を有していました。私たちは、このような症状を呈する患者様の腸内機能を回復させ、排便状況の改善を目指しました。

その一手段として、乳果オリゴ糖(以後、オリゴ糖)の活用を実施しました。その結果、オリゴ糖非摂取期と摂取期の経過から、オリゴ糖の有効性が見られたのでここにご紹介します。

●実施方法

対象:排泄管理を必要とする排便困難患者様15名。

摂取方法

  1. 昼食時にオリゴ糖7~20ml を計量カップで飲用。
  2. 排便状況については、排便一覧表を作成し、排便状況を記入。
  3. 記入方法は、多量◎ ②中量○ 少量△ なし0、の4段階に分類。
  4. 排便状況については判定量を用い記載。下剤など(浣腸も含む)についても一覧表に記載。

排便量の定義:院内基準に基づき、汁茶碗1杯を中量とし、それ以上を多量、以下を少量としました。

調査期間:2009年12月~2010年5月(オリゴ糖非摂取期1カ月、オリゴ糖摂取期後5カ月)。

●実験の経過

定期下剤・滴用下剤数の変化:

被験者様15名の滴用下剤の滴下数使用については、オリゴ糖非摂取期2,788滴でした。摂取期1カ月では1,845滴、2カ月では1,040滴となり、3カ月目では905滴と、非摂取期の約1/3程度に減少。その後も若干の増減はあるものの減少傾向となりました。

滴用下剤の減量については、排便状況により実施しました。定期的下剤使用量(臨時薬を含む)においても、非摂取期ではトータル約1,200錠でしたが、下剤中止患者様を含め摂取期1カ月目で406錠と大きく減少しました。その後、若干の変化は見られましたが、非摂取期の1/3程度で推移しました。

以上のように、滴用下剤と定期下剤使用量に関しては、ほぼ推移は比例する結果となりました。

浣腸使用回数の変化:

非摂取期では、下剤などを服用しながらも浣腸の使用数は月単位81本でした。しかし摂取期以降は徐々に浣腸使用本数が減少し、4~5カ月目では、36~7本と半分以下に減少しました。

排泄状況:

対象者様15名の非摂取期(定期下剤を含む)の排便回数は、82回確認できました。摂取期では、定期下剤を基本的に中止した結果、1カ月目73回と、わずかですが減少が見られました。

しかし、3カ月目に入ると自然排便回数は100回台となり、4~5カ月目では140回台に急増し、安定した排便状況が見られるようになりました。

非摂取期は腐敗性ガスなどにより著明な腹部膨満が再々確認されていましたが、摂取後2カ月目頃より腹部膨満が改善し、便性状についても泥状便から有形軟便に変化する方が見られるようになりました。

●結果

今回、15名の対象者様は、オリゴ糖非摂取期では、ほぼ全員が下剤などを投与していましたが、オリゴ糖導入に合わせ中止、または減量を達成できました。

オリゴ糖導入後、排便などで平均的効果が出るまで総体的に90日前後を要しました。これは、オリゴ糖によって腸内機能が回復するにあたり、糞便ビフィズス菌郡などの占有率が上昇・生着するまでに、ある程度の時間を要した結果であろうと推察されます。

腸内機能の回復による排便状態の改善は、下剤などに大きく依存することなく、また、巨大結腸症患者に対しても多少の差はあれ、全体的に大きな効果が認められました。

オリゴ糖の導入によって、グラフに示した結果以外にも、対象者に共通するいくつかの大きな改善点が確認されています。その1つが腸内腐敗による腹部膨隆の改善、もう1つは便性状の変化およびGE(グリセリン浣腸)施行に対する確実な反応便の確認でした。

オリゴ糖導入により有害菌の増殖を抑え、善玉菌といわれる糞便ビフィズス菌群等が増殖した結果、アンモニア、インドール、フェノール類などの腐敗産物の排出を制限することができたのではないかと考えています。

同時に、腸内腐敗の抑制が大腸の緊張を改善して腸内機能を高め、その結果、明らかな変化につながったのではないでしょうか。

特に巨大結腸症患者については、ガス貯留が著明であったことから、腸内腐敗の抑制は、巨大結腸症患者の排便に関して、大いに有効であったと思われます。

便性状についても、不消化様または泥状便が、オリゴ糖導入後は有形軟便に変化することが確認できました。これらの変化は、オリゴ糖導入以降に起きており、腸内機能に大きな影響を与えたことが推測されます。

下剤の長期使用は依存性を高め、効果の減少と反比例し、増量につながりやすくなります。

しかも下剤の大量投与は時に腸管神経の変性を起こす危険性があり、さらなる便秘を誘発しかねません。

「便秘には下剤を」という日々の習慣的・機械的な下剤投与について、看護者サイドも見直すきっかけになったととらえています。

●まとめ

  1. 下剤重視に偏ることなく、より効果的な手法をチーム医療の土台として取り入れていく姿勢が必要である。
  2. 下剤減量に伴う不安については看護技術で補い、習慣的または機械的な下剤投与のあり方を見直していくことが大切である。
  3. 患者様の負担の軽減はQOL を高めることにつながる。
  4. 業務の効率化は、日々の実践の中から見出していくことができる。

臨床現場レポート目次に戻る

 

  • 臨床現場リポート
  • 学会・展示会情報
  • 資料ダウンロード
  • 医療トップに戻る
  • ●オンラインショップ
  • お問い合わせ
  • サイトトップに戻る