臨床現場レポート|株式会社H + B ライフサイエンス情報誌 第2号2010年9月発行

健康長寿バイキング教室
マービーを使用した美味しい低カロリーメニュー開発への取り組み


(独立行政法人 労働者健康福祉機構 中部労災病院 栄養管理室長 徳永佐枝子先生)

●はじめに

当院は、愛知県名古屋市の南部に位置し、稼働ベッド数556床、26診療科、1日平均外来患者数は1,550名、平均在院日数は約16日の急性期病院です。

昭和30年の病院創設以来、労災、勤労者医療および地域医療の中核を担っており、糖尿病‐内分泌内科は昭和46年に専門外来を開設し、昭和62年には、東海地区で初めてΓ糖尿病センター」を設置、糖尿病の診断・治療・合併症管理・教育指導までの一貫した管理を行っています。

また、病院全体に糖尿病療養指導士は20名(管理栄養士‐薬剤師・看護師)が資格を有し、糖尿病学会指導医4名と糖尿医4名の合計8名が治療にあたる日本糖尿病学会認定教育施設です。

定期治療患者数は約3,500名、外来治療患者は1日約130名、入院患者は年間約500名を有し、日々、糖尿病治療に邁進しています。

●栄養管理室の現状

栄養管理室の業務はΓ給食管理」を委託化し、病院側は「栄養管理」「栄養管理計画」「栄養サポートチーム」「栄養指導」に力を注いでいます。人員構成は、病院側は管理栄養士5名(うち1名は嘱託)、調理師5名、日本ゼネラルフード(以下、委託側)は、管理栄養士3名、栄養士11名、調理師15名、調理補助20名の合計59名のスタッフで運営を行っています。

特に、栄養管理室では糖尿病患者への栄養指導には力を入れており、外来栄養指導をはじめ、入院中は、個別指導2回、集団指導2回を実施したのち外来指導へと継続するシステムを構築し、切れ目のない指導を通じて、糖尿病治療に寄与しています。

●健康長寿バイキング教室

そのような中、座学ばかりでなく栄養指導の媒体として入院患者様を対象とした「健康長寿バイキング教室」を平成21年10月から第2水曜日の12:00~13:00に開始いたしました。

当院は残念ながら調理実習室がないため、糖尿病‐内分泌内科のある4階デイルームを会場として、看護師、管理栄養士、調理師の協力で開催しています。

バイキング教寮の対象患者様は、主に教育入院を目的とした約10~15名で、ご家族の見学希望者も受け入れています。

この日は、通常の食事とは違って、「皆で一堂に会し、医師、看護師、管理栄養士と一緒に食事の選び方の勉強を行い、楽しく食ベていただく」ことに重きを置くため、献立には力を入れます。

当院は、献立作成は委託側の業務となっていますが、病院栄養士との献立検討に費やす時間は多く、コミュニケーションをとりながら実施しています。「健康長寿バイキング教室」の献立はまた別枠として、委託側の管理栄養士、栄養士を5グループに分けて当番制にしました。普段、献立作成をしない栄養士にとっては難関です。

当院に入職した委託栄養士は、新卒が多く、献立作成力は未熟なため、病院栄養士が献立作成のイロハから、実際に立てた献立のチェック、単位配分、塩分の調整などの指導を行います。

おいしい低カロリーのデザート開発には毎回苦労しています。しかし、何回も献立作成をやり直し、試作を繰り返して、ようやくOKが出た献立が実際にバイキング教室の献立として披露できることに、委託栄養士は喜びを感じています。

献立ができたら、次は患者様用の「健康長寿バイキング教室案内状」「当日の選択メニュー表」「バイキングメニューレシピ集」作成に取りかかります。季節に合わせたイラストを利用した、楽しい仕上がりを心がけています。

バイキング教室の前日には、管理栄養士のほうから「健康長寿バイキング教室案内状」を持って、患者様のところに主旨や運用方法の説明に伺います。患者様の中には「バイキングだからいくらでも食ベていいの?」などの冗談(?)も飛び出し、日頃と違った趣向をとても喜んでいただいています。

栄養管理室では、前日に担当栄養士と調理師の最終確認を行い、盛り付け方、使用する皿や備品などの打ち合わせを行います。

いよいよ当日。当日、患者様が集まってこられる12:00頃には料理のセッテイングや写真撮影も終わり、挨拶を済ませたら、献立作成担当栄養士のほうから献立や選び方のポイントを説明します。

その後、患者様は、エネルギー量が明示された選択メニュー表とにらめっこしながら、ご自分の適量を考え、栄養士と相談しながら料理を選ぶ手順となっています。

中には、「全部食ベたいので半量ずつ」など、いろいろな注文が出てきますが、栄養士にとっては絶好の指導媒体ですので、退院されてからの食事づくりや外食時の選び方のポイントなどを織り交ぜながら、細かく調整していきます。

その中でも、皆さんの一番の関心が、HプラスBライフサイエンスの「マービー」を使用したデザートです。マービーはカロリーが砂糖の1/2なので、同じカロリーで砂糖の2倍量使えるため、よりおいしいメニューが作成できます。しかも砂糖のように血糖値が上がりませんので安心です。

0kcalの甘味料もありますが、そうしたものは甘すぎるので、患者様が甘さに慣れてしまい、より甘いものを求めるようになりがちです。また、0kcalだといくらでも使えるので、甘さのコントロールがかえって難しくなる側面があります。

糖尿病の患者様には甘い物が好きな方が多いのですが、「食ベてはいけない」という葛藤と闘っていらっしゃることが多く、時にはそのストレスで血糖コントロールが乱れてしまう患者様も見受けられます。

そこで当院では、エネルギー量を把握して、使用食材や食ベるタイミングを考慮するよう、指導の中に織り込む工夫をしています。

当院のデザートはカロリーを40kcal程度に抑えており、甘い物は指示エネルギー量の範囲内で楽しみとして選択し、野菜をたっぷり食ベた後で食べましょう、と指導しています。また、食事中には、委託栄養士が実際の食材を使って、エネルギー量が一目でわかる「食材エネルギー比ベ媒体」を見せながら説明して回るようにしています。患者様にとっては食事療法の座学では得られない知識を得られる、絶好のチャンスとなっています。

一方、看護師は服薬やインスリン注射の支援を行い、医師は患者様と一緒に食事をしながら、退院後の治療などの相談に乗っています。

このように、バイキング教室が医療者と患者様のふれあいの場ともなっていることは、チーム医療のあるべき一つの姿だと感じます。

毎回、バイキング教室終了後にはアンケートを実施し、その後、反省会を行います。実際に作成した献立と出来映え、味、患者様への説明で困ったこと、準備などで不備はなかったかなど、そのつどの反省をもとにマニュアルを作成することで、徐々に段取りがよくなり、効率性も高まってきました。

●バイキング教室を通して

健康長寿バイキング教室の開催は、準備などで大変なこともありますが、大変さよりも得たもののほうが大きいと感じています。

まず、チーム医療の中に調理師や委託栄養士が入ったことにより、食事を通して糖尿病患者様の治療に貢献したいという気持ちが強まった結果、皆が献立の提案などに積極的にかかわりを持つようになりました。

若手栄養士はベテラン栄養士とのコミュニケーションを通じて、自ら献立作成を勉強し、試作を何回も繰り返すなど、「患者様においしい料理を食ベてほしい」という気持ちが強まり、管理栄養士や栄養士として成長する姿を見ることができました。

管理栄養士・栄養士・調理師(病院側・委託側合同)らは、健康長寿バイキング教室を通じて患者様と知り合う機会を得、患者様とのふれあいに喜びを感じているようです。当院では嗜好調査を兼ねたミートラウンド(毎週月曜日と火曜日に実施)を行っていますが、そうした折にも病院栄養士・調理師としての自覚が高まった姿を見ることができます。

これらの成果をもとに、これからもおいしい低カロリーメニュー開発を通じ、良好な血糖コントロールの支援ができるよう、努力を続けていきたいと考えています。

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